社名の由来
The origin of Transagent
アースクラブにてご指導いただきました故糸川英夫先生のご著書より弊社の名称をつけさせていただきました。
情報を効率よく交換できる受容変換器「TA」の開発へ-糸川英夫-
「TA」とは、これから到来する21世紀に向かって、これまでの既製理論を超えるべくまったく新たなコミュニケーションを目指して、かつて組織工学研究所で検討した結果名づけられた造語である。
たとえば、仮にいまある家庭で、夫婦喧嘩が起きて別れ話にまで発展したとする。二人が結婚するとき仲人をつとめたNさんに話が伝わり、驚いて急きょ駆けつけて事情を聴いた。すると、奥さんの話や態度を、旦那さんが誤解し、旦那さんの行動を奥さんが邪推し曲解していることがわかった。そこでNさんは間に入って丸く収めた。
そのNさん役が「TA」である。
もう少し、サイエンスに即していい直そう。
家庭用の電気冷蔵庫は、当然ながら電気によって作動する。電気で作動するのだから、電気ならなんでもいいやと、わざわざ高圧線につなぐ人がいたら、ちょっと病院で診てもらったほうがよいだろう。
でも、仮の話として、10万ボルトの高圧線につないだら、どうなると思いますか?
そう、瞬時にして冷蔵庫は燃え上がり、高圧線もいかれてしまう。そこで一巻の終わりにならないようにするためにと、不格好な形の物体を電柱に取りつけた。
つまり、みなさん周知のトランス、このトランスが「TA」の原点なのである。
トランスの正確な名称は、トランスフォーマーである。しかしこのトランスフォーマーの役目を、人間社会の情報伝達のなかに移しかえて、トランス・エージェント(TRANS-AGENT)略してT・Aということばをつくったのである。
だれかがトランスを取り外し、別な何かの用に役立てたいと一生懸命に考えても、きっと名案は浮かんでこないだろう。つまり、電気のトランスも私のTAも、それ自体としては、何の役目も果たさない。しかし、ある何かが発信する情報を、相手にとってわかりやすく理解しやすい形に変換する能力を持っている。そして、それが生まれると、人間の考え方も生産の様式、生まれる品物の規模も変わってくる。
通訳という職業が存在する。通訳は、何物も生産しない。だが、これで情報の発信者・受信者双方のセンサーがスムーズにはたらいて、最高レベルの情報が相互に伝わるようにする。その結果、人間的理解が深まって、発信者と受信者のそれぞれが、より人間として成長していく。
TAは、そうした役割をはたしていく“変換器”として、あらゆる局面に対応できるキャパシティを持つ。そういう目的をもって開発されていくはずだ。
地球環境はいま、深刻な問題として世界にのしかかっている。その深刻な問題を放っておいてよいのかと、しきりに拳を振り上げる人々もいる。しかし、このことはつまり、人類が共存しなければならない地球のすべての生命系とのあいだに、センサーの相互受容が存在せず、とりわけ、人間だけが受容機能を失ってしまっていることに気づかなかったためだと私は思ってきた。
環境が生物を生んだのではなく、生物が環境を生んだのでもない。環境が生物を生み、生物が環境を生み、その双方が、長い長い生命の歴史を通じて共生関係をつづけ、セルフ・オーガナイゼーションによって維持されるような方向をたどってきた。それが、ガイアの賜物であった。
しかし、いま人類がみずからの方向づけを見誤れば、大地の母もついには顔をそむけるだろう。名もなき草木虫魚、すべて命あるものの生命の歌を、しっかりと聞き届ける精度の高いセンサーを、私たちはいま一人ひとりが身につけなければならない。だが、そのためには科学がまず、人と生命体とをつなぐトランス・エージェントを作り出さなければならない。
『「復活」の超発想』(徳間書店/1992)より