中国BtoBデジタルマーケティングで知っておくべき日本とのサービス比較
昨今、中国においてもBtoBマーケティングの重要性が高まっています。この流れは日系企業に限らず、中国企業でも国内市場の開拓を目的にマーケティング活動に力を入れるケースが増加しています。
そこで今回は、日系企業が中国でBtoBデジタルマーケティングを展開する際に知っておくべき日本と中国のサービスの違いを紹介するとともに、私自身の見解を交えたBtoBマーケティングへの活用方法についてご説明します。
なお、サービス名に関しては、昨今その境界が曖昧化しており、多くのサービスが”SNS”という表現で一括りにされることが多いため、一部独自の表現で記載している点をご了承ください。
検索エンジン
- 日本:Google, Yahoo(エンジンはGoogle), Bing
- 中国:百度, Bing, 搜狗
検索キーワードを入力すると、自然検索によるサイトと広告によるサイトが検索結果に表示され、右側にはディスプレイ広告が表示されるという構造は日本と中国で共通しています。
そのため、広告に関しては多少の差異はあるものの、機能や特徴はほぼ同じと言えます。BtoBマーケティングにおいてデジタル手段で見込み顧客を獲得する際の最有力手段は、日本と同様に検索広告と考えて間違いないでしょう。
唯一の違いとして挙げられるのは、日本ではYahooとGoogleが存在するものの、Googleが圧倒的なシェアを誇り、広告出稿の際にはGoogleが必須とされるのに対し、中国では百度、Bing、搜狗など複数の検索エンジンが存在し、いずれも圧倒的なシェアNo.1とは言えないため、「どれがマストか」を一概に決めることができない点です。その中でも百度は比較的シェアが高く、さらに便利なポータルサイトを併設していることを考慮すると、広告出稿においては百度を選ぶのが現実的な選択肢となるでしょう。
メッセンジャーアプリ
- 日本:LINE
- 中国:Wechat
つながった人とのコミュニケーションや、企業公式アカウントによる情報配信・サービス提供のプラットフォームという点では、WechatとLINEに共通点があります。しかし、Wechatではモーメンツと呼ばれるタイムライン機能が非常に普及しているのに対し、LINEでは同様の機能がほとんど普及していないという違いがあります。一方で、WechatにはLINEニュースのようなポータルサイト的な機能は存在しません。
Wechatは利用ユーザーが約14億人と非常に多いため、広告も広く展開されています。その中で、モーメンツに表示されるバナー広告がよく利用されていますが、これらは知り合いが投稿する情報(例:訪問した場所や食事内容など)の間に表示される仕組みであるため、衝動買いが起きにくいBtoB商材においては即購入や問い合わせ獲得の効果はほとんど期待できないと言えるでしょう。
一方で、以前は公式アカウントへのフォロワー獲得手段としてモーメンツ広告を活用することが推奨されていました。その理由は、1~2年前までは移動中に公式アカウントの記事を読むユーザーが多く、勉強熱心な見込み顧客に情報を提供して“信用ポイント”を高める手段として有効だったためです。
しかし、Wechatの仕様変更により、公式アカウントの記事配信が以前のように知り合いからのメッセージと同列に表示され、通知も受け取れる形ではなくなりました。現在では、「公式アカウント記事」というメニューをタップして1階層下がらなければ記事にアクセスできない仕様となり、これにより記事の閲覧数が減少傾向にあります。そのため、今後は「信用ポイント」を獲得する手段としてのWechat記事配信の有効性は低下していくのではないかと考えています。
仕様変更の背景については想像の域を出ませんが、公式アカウントを運営する企業が増えすぎた結果、通知が過剰となり、知り合いからのメッセージが埋もれてしまうことで、記事が読まれなくなる傾向があったのかもしれません。そのため、Wechat本来の目的である友人とのコミュニケーションを阻害しないために仕様が変更された可能性があります。いずれにせよ、Wechat公式アカウントの記事配信は遅かれ早かれ衰退する運命にあったのかもしれません。
つぶやきアプリ
- 日本:X,Facebook
- 中国:Weibo
Weiboは20年以上の歴史を持つ老舗サービスであり、2025年1月現在で月間アクティブユーザー(MAU)は約6億人に達している非常に浸透したプラットフォームです。イメージとしては、FacebookとX(旧Twitter)を足して2で割ったようなサービスと考えるとわかりやすいでしょう。芸能人はもちろん、各業界のインフルエンサーが不特定多数に向けて情報を発信しています。
Weiboでは当然ながらバナー広告も存在し、ユーザーが閲覧する記事やフォローしているインフルエンサーの属性などに基づいてターゲティング広告を配信できます。そのため、セミナーや展示会への出店認知など、告知目的での活用が可能です。
Wechatが主に自分とつながりのある友人やフォローした公式アカウントからの情報配信を受け取るプラットフォームであるのに対し、Weiboは一般記事や広告を不特定多数に配信できる点で、告知系の手段として非常に有効であると言えるでしょう。
自作コンテンツ動画配信
- 日本:YouTube、ニコニコ動画
- 中国:billibilli、Youku
日本の自作コンテンツ動画配信と言えばYouTubeが代表的ですが、中国の場合、ショート動画はTikTokが主流である一方、それ以外の動画形態に関しては、多くのサービスがNetflixのような作品動画、自作コンテンツ動画、ライブ配信をすべて網羅するプラットフォームとなっています。現時点では、自作コンテンツ動画配信においてYouTubeのように圧倒的な1位の存在はありません。
私自身が日本人であり、比較的多く目にする機会がある(日本のコンテンツが多くアップロードされている)ことから、自作コンテンツ動画配信が比較的多いbilibiliを代表例として挙げました。なお、以前はYoukuが自作コンテンツ動画で圧倒的なシェアを持っていましたが、現在は作品動画配信が主流となり、自作動画がYoukuに投稿される話はほとんど聞かなくなっています。
このような状況を踏まえると、中国では認知度向上や信用ポイント向上を目的として自作コンテンツ動画を活用する必要性は今のところ低いと考えます。むしろ、自社サイトに動画を置くことでネットワーク負荷やサーバーリソースを消費してしまうリスクを避けるために、安定かつ安価な動画配信サービスを利用して動画を掲載する程度の活用にとどめる方が現実的かもしれません。
ライブ配信(ライブコマース)
- 日本:無し?
- 中国:小红书
日本ではまだ浸透していない、ライブ配信形式で商材を紹介し、その場で購入できるサービスがあります。簡単に言えば、テレビ通販のアップデート版と言えるでしょう。ただし、この仕組みはその場で購入する形式であるため、BtoB分野での活用は難しいと考えられます。
一方で、ライブコマースではありませんが、中国ではオンラインセミナープラットフォームが徐々に登場しています。現在はまだ発展途上ですが、もしどこかの企業が収益化に成功し、シェアを独占するような状況になれば、今後さらに浸透していく可能性があると言えます。
ショート動画
- 日本:TikTok
- 中国:TikTok
ショート動画に関しては、日本と中国で唯一、代表的なプラットフォームが同じものになります。そのため、詳細な紹介は割愛いたしますが、ご存知の通り、インパクト重視の動画形式であるため、BtoBマーケティングにおいては有効性が低いと考えています。
以上、その他にもデジタルサービスが存在する可能性はありますが、代表的な範囲で日本との違いと、BtoBマーケティングにおける活用についての見解を記載いたしました。ぜひご参考にしていただければ幸いです。