BtoBでの購買とBtoCの購買の特性の違いを知る
マーケティングに関する情報は非常に多く出回っていますが、その大半が個人消費(toC)を想定した知識や事例となっています。そのためBtoBマーケティングにそのまま適応しても成功しない場合がほとんどです。今回は、成功しない理由をBtoBとBtoC購買の3つの違いから考察していきます。
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違い1. BtoBでの購買は関わる登場人物が多いため、複雑かつ長期化する
一般的に個人の購買において、特に自分で収入を得ている人は、基本的に何かを買う際には自らインターネットで調べたり、店に足を運んで実物を見て購入する商品を決定します。つまり、買い手側は1人であり、売り手側も1つの関係(サイト、店員さん)と言えます。そして大抵は、即決で数時間以内に購買が決定されます。
一方で、企業での購買は下図のように、買い手の購買担当と売り手の営業は窓口という形で1対1の関係になります。しかし、BtoB商材は専門知識が必要であったり、買って終わりではなく運用を考慮する必要があるため、裏では、売り手側・買い手側共に、多くの人が関わっています。また、売り手側はそれぞれの関係者が自分の立場によって商品の採用基準が異なるため、意見をすり合わせながら物事を進める必要があり、必然的に商談が複雑かつ長期化する傾向があります。
違い2. BtoBでの購買は採用のための客観的な理由が必要となる
個人が物を購入する際には、ほとんどが「かっこいい」「楽しそう」「便利そう」など、自分の感覚で決定しますが、BtoB商材では、”違い1″で述べたように、購買に関わる人が多いため、次の点が重要です。
そもそもなぜその商品を購入する必要があるのか?
自社における課題を設定し、その解決の必要性を明確化すること。
その課題を解決するためにどれだけの費用がかかり、どれくらいのメリットを得られるのか?
課題を解決することで得られる定量的な費用対効果を考慮すること。
これらを文書化し、関係者が共通の認識と合意のもとで購買が行われます。つまり買うための正当な理由が必要なのです。
違い3. BtoBでの購買は購買窓口の評価(出世)に関わる
個人であれば買い物に失敗しても、「あー無駄使いだったなー」と一人で後悔するぐらいで済みますが、BtoB商材の購入で失敗した場合、いろんな人を巻き込み、そして文書化して合意(稟議)を通しているのにも関わらず、その購入でトラブルが発生したりします。さらに、お金だけかけて何も課題が解決されなかった場合、その失敗の責任は購買担当者が持つことになるということが往々にして起こります。つまり、購買活動は購買担当者の評価に直結するのです。
なので、売り手側はどうしても売ることに前のめりになってしまいますが、その意思決定により購買担当者の評価(出世)につながる可能性があるということを念頭において商談を行う必要があります。
“違い1,2”はマーケティング本や動画などでは一般常識としてよく見られますが、この”違い3”が私の経験を踏まえて新たに追加したい内容になります。この3つめの違いがマーケティングや営業活動において数ある会社の中から自社を選んでもらうために非常に重要な要素であると考えています。
まとめ
今回ご紹介した3つの違いを踏まえたうえで、BtoBマーケティングを行う上での私の所見を2つ記載いたします。
1つ目は、BtoB商材においてサイト・販促資料・展示会などの販促活動をする上で、よく陥る
見た目への過度なこだわり
検討の土台に上げる材料にはなるが、それが理由で選ばれることはない
競合他社と同じような事をする・販促資料を作る
「違いが無いなら有名な方、安い方を選ぶ」
このような事をしても新たな受注につながるわけではないということを念頭におくことをお勧めします。それよりも、自社または自社の商材と競合との違いを徹底的に考え、買い手の購買プロセスの中で誰に対して、どの時点で、どのような粒度(細かすぎず粗すぎず)で差別化につながる情報を必要としているか?という仮説を立てて、訴求手段や表現を試行錯誤しながら最適解を見つけていくことが重要だと考えています。
そして、もう一つは、BtoB商材においては、中には、サイトからワンクリックで購入するような商材もありますが、オーダーメード、セミオーダー型の商材の場合は、営業が受注に繋げるための非常に大きな役割を担うことになります。その際に、上述の図では、見購買担当と営業が向き合っている構図になりますが、実際の営業活動では、購買担当と同じ視点に立ち、寄り添うような形で、顧客の課題解決を本気で考えると同時に、購買担当の個人的なニーズを満たし評価に貢献できるような活動を心がけることが重要だと考えています。