BtoBマーケティング組織を立ち上げる時に意識する3つのこと
『デジタルマーケを始めたばかりの組織がしがちな残念な問合せ管理の運用』でも記載したように、最近BtoB営業組織においてもマーケティング、特にデジタル媒体を活用したマーケティングの重要性が高まっており、社内にマーケティング部門を立ち上げる企業が増加しています。そのようなトレンドに伴い、BtoB営業組織の立ち上げ支援や人材育成を主力とする弊社へのお問い合わせも増えております。
しかしながら、「マーケティング」に関する話題になると、関連情報が多く溢れているため、どうしても方法論や抽象的な理論に偏りがちで、根本的な部分が見落とされていると感じます。そこで本記事では、組織としてマーケティング活動を行う際に、方法論や理論に先立って、責任者や担当者が常に念頭に置くべき3つの要点について解説いたします。
地道な作業の積み重ねであること
情報を収集すると、「DX」「MA」「インサイト」「カスタマーサクセス」などのカッコいい横文字が次々と生まれ、それらを巧みに使いこなしながら「これだけで月○○件リード獲得」といった動画やセミナーが目立ち、どうしてもマーケティングに対して華やかで即効性のあるイメージを抱きがちです。
しかし、BtoB営業組織においてマーケティング部門を立ち上げる際、多くの場合、専門家がいないのが現実です。リスクを抑えるため、最初から専門家を採用するのではなく、営業経験者の中で素養がありそうな方が責任者や担当者としてアサインされることが一般的です。そういった方々は、素養があると評価されているだけに勉強熱心である一方、情報や流行の言葉、方法論に目を奪われがちです。
しかし、特にBtoBの世界では、マーケティングも多くの業務の一つに過ぎず、何かを始めたからといってすぐに結果(受注)に結びつくわけではありません。地道に試行錯誤を重ねることが求められます。
弊社のお客様でも、マーケティングを通じて確実に業績に結びつけている組織は、施策の実行にとどまらず、営業が受け取った連絡先や無効アドレスの整備、サイトの動線見直し、資料の最新化などを日々の業務として定義し、工数をかけて実行しています。こうした地道な積み重ねが、次の施策のアイデアや新たなビジネスチャンスを生み出すのです。
即受注には繋がらないこと
マーケティング理論において、究極のゴールは、企業が何も働きかけなくても顧客から「買わせてください!」と求められる製品・サービスを提供し、その認知度を高めることです。そして、顧客が自らその製品を宣伝してくれるような状態を作り出すことです。実際、世界ではiPhoneが、日本ではユニバーサルスタジオがその好例として挙げられることが多いです。
マーケティング活動において、こうした理想を目指すことは非常に重要であり、目標とすべきです。しかし、現実的には、こうした成功事例は世の中に存在する何十万、何百万もの製品・サービスの中のほんの一部に過ぎず、まさに宝くじに当たるようなものであることも忘れてはなりません。
特にBtoBの世界では、『BtoBでの購買とBtoCの購買の特性の違いを知る』で記載したように、そもそも購買プロセスの構造上、顧客からの最初のアクションが「購入」に直結することはなく、それはあくまでもスタート地点に過ぎないことを忘れてはなりません。
したがって、マーケティングの成果を「すぐに受注に結びつくかどうか」といった部分的かつ短期的な視点だけで評価するのではなく、最初は言われたとおりにしか動けないが、愚直にサボらずに働く新人営業のように捉え、長期的に育てていくつもりで取り組むことが重要です。
人間は他人の事にはそんなに興味がない
この件については賛否両論がありそうですが(反対意見が多いかもしれません)、たとえば、個人が髪型を変えてみて、本人があまり気に入っておらず、友人や同僚に「似合っていない」と思われたらどうしようと不安に感じたとしても、実際のところ、周囲にとってそれが似合っているかどうかはさほど重要ではない、というのが現実です。むしろ、周囲が気にするのは、不潔で匂うなどの、利害に関わることのみです。
これをマーケティング活動に置き換えると、コンテンツを作る側では、「このフォントがイマイチだ」「画像が気に入らない」など、細かな見た目にこだわる人が多くなりがちですが、実際、相手(顧客)は、そこまで気にしていないでしょう。顧客が見ているのは、そのコンテンツ(サイトやパンフレットなど)が、自分の抱える課題を解決してくれそうかどうか、という点です。
したがって、見た目へのこだわりはほどほどに(軽視しろと言っているわけではありませんが)、競合の多い製品・サービスであれば、競合との差別化を表現する方法に注力すること、また、新しい概念の製品・サービスであれば、顧客にとって役に立つことを理解してもらえる表現に時間を費やすことをお勧めします。