SFA導入失敗あるある「最初からやる事詰めすぎ問題」
今回は、SFA導入時に「SFAとはこうあるべき」という”To Be”に視点が行き過ぎて、最小から運用対象の業務やシステム連携などのスコープを広げすぎて失敗するケースについて考察します。
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SFAは育てていくシステムという特性
営業の方がSFA以外に売上・費用に関して扱うシステムの代表と言えば、販売管理(受発注在庫管理)と、経費申請でしょう。これらの業務は
- 確定情報を扱う
- 業務ルール(どの時点で何の情報が必要か?どの作業を誰がやるか?)が決まっている
ため、システム導入時に予め仕様を決めることができ、そこから変更が少ないという特徴があります。
一方で、SFAは上述のシステムと違い
- 未確定情報(見込情報など)や不完全情報(競合情報、リード情報など)を扱う
- ルールの大枠は決まっているが、細かい部分においては状況に合わせた対応が必要な業務がシステム化対象
ため、最小からキッチリと仕様化することは現実的ではなく、現状データや組織のシステム浸透状況を見ながら業務範囲や、仕様を柔軟に変えていく必要があります。
SFAの役割は効率化ではない(とは限らない)
システムに求められる役割という観点において、販売管理や申請業務システムの役割は、作業効率化です。理由は、これらの業務に関わる工数を減らすこと人件費削減につながり、利益が増えるためです。
一方、SFAの役割は利益最大化となります。ただし、”SFA導入失敗あるある「作業効率化を目的にしても利益貢献につながらない」”で記載したように上述の他のシステムとは違い、作業効率化は場合によっては、利益貢献につながるかもしれませんが、比較的大きな金額の商材を売る場合は、業務が1時間節約できたところで受注を1件増やすための貢献度合いは低いのが現実です。
SFAが担う一番の役割は、あくまでも個々で抱えている営業情報を最適な形(細かすぎず粗すぎず)で集め可視化し、営業組織全体ないしは個人の受注を増やすための施策や行動計画を立てる、そしてそれらの進捗状況を確認する改善活動に役立てることです。
なぜ最初からやる事を詰めすぎようとするのか?
世の中の情報では、20年以上前からSFAの成功要因は、”Big Think, Small first”と言われ続けているにも関わらず、相変わらず”Big Start”で始めようとするケースがなぜ減らないのかということを考えてみたいと思います。
結論は、導入責任者ないしは、それを承認する経営陣が、「システムは、作業効率化のために導入するもの」という、根っこにある認識がそうさせているように見受けられます。つまりSFAに期待する役割とのギャップが生まれてくるため、この業務を入れないと効率化にならないなどで、判断基準が”効率化”だけになってしまい、結果的に営業に関するすべての業務を最初からシステム化すべきだという意思決定につながっているのではないかと考えられます。
最初からやる事詰めすぎは何が悪いのか?
前段が長くなりましたが、SFA導入時にやる事(対象業務範囲やシステム連携)を詰めすぎることの失敗リスクについて考えていきたいと思います。
初期コスト(費用、時間)がかかる
当然なのですが、スコープが広いと開発規模が大きくなるため、外部コンサルティングに委託するにしろ、自社のリソースのみで導入するにしろ、いずれも費用や時間がかかります。それだけでも、利益最大化という目的に対するコスト部分が圧迫された状態でのスタートになります。また、準備期間に1年もの時間を掛けている間に、外部環境や組織や扱う商材が変わって、検討が振出しに戻るというケースは非常に多く見られます。
改修コストがかかる
上述のようにSFAとは運用してから初めて認識する業務要件や、新たな要望が出るなどといったことが日常茶飯事のため、必然的に改修頻度が多くなります。そこで最初からシステム化範囲が大きいと、何かシステムに手を入れる度に、影響範囲の調査や、改修が大きくなるだけでなく、手戻りも起こるため改修コストも増大していく可能性が高いです。
維持コストがかかる
BIシステムを最初から導入する場合に非常に高確率で起こるのですが、分析要件やデータ要件がわからない状態で構築し、いざ実データを使ってレポートを出してみても、データ不足、データ品質が発覚したり、そもそも当初開発したレポートの表現では現状把握ができないということがわかり、しばらく(数年単位)はEXCELで運用することになったりします。その間に発生するシステムのライセンス費などが余計にかかることになります。
かけたコストが無駄になる
このような例があります。代理店を巻き込んだ業務などをSFA導入当初からシステム化した一方で、実際運用を開始しても、自社社員でさえ利用させるのに苦労するシステムなのに、代理店が協力してくれなかったなどが起こると、その業務に関する機能は形骸化し、結局使われないものが出来上がってしまいます。
以上が、コスト面でのリスクですが、次は実務観点でのリスクを下記に示します。
データを入力しないリスクが増大する
ユーザのSFAを使った業務習慣・風土が形成されてない状態で、複雑な箱(SFA)を用意しても使いこなせる可能性は非常に低いです。一方で、ただでさえ、データ入力をさせることは、SFAにとって最も大きな壁なのにもかかわらず、複雑な箱(SFA)の前では、拒否反応が増大し、ますますデータ入力の壁が高くなってしまいます。
業務がまわらないというリスクが増大する
以前にもご紹介しましたが、SFAと販売管理では必要なデータ要件が違うにも関わらず、作業効率化をしたいという理由だけで、導入初期から会社、サプライヤマスタなどを連携したのですが、いざ運用を開始すると、営業として使いたい情報とのギャップがありすぎたということ。そして、そのマスタありきで他の業務の仕様が決まっていたため、全く業務が回らなくなるというリスクが高くなります。
SFAはやはりSmall Start
やはりSFAの成功は、小さく始めることでしょう。最初は、多少業務効率が悪くても、SFAを使った業務を行っていく風土形成を進めながら徐々に大きくすることが望ましいと考えています。
例えば、
- まずは、案件管理の台帳化ぐらいがよい。個人的には商談報告すら要らない。
- その後状況に応じて、見積やサンプル申請などの効率化・統制下を目的とした業務に拡張。
これらで、風土形成を行いながらマーケティングを目的とした顧客データベース構築、代理店を巻き込んだ利用、データ可視化の効率化、徹底化を目的としたBIシステム構築(他システム連携)など拡張していくことが望ましいでしょう。