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SFAで管理する顧客の範囲について考える

SFAで管理する顧客の範囲について考える

SFAを有効活用するにあたり、永遠の課題となるのはシステム上での顧客基本情報を管理する顧客マスタの運用方法です。私は長年にわたりSFAの導入支援を行っていますが、どの企業にも適用できる万能な顧客マスタの運用方法は未だに見つかっていません。

顧客マスタの運用は、コンサルティングのたびに新たな問題を引き起こす厄介なテーマであり、同時に各企業の営業管理に関する様々な示唆を与えてくれる興味深いテーマでもあります。本記事では、顧客マスタ管理を検討する際の中心となる『顧客の範囲』について考察いたします。

顧客の範囲は十人十色

一言「顧客マスタ」と言っても、顧客マスタとして扱う情報は組織によって異なります。また、同じ会社内でも各部署、各担当者で「顧客」の対象や範囲が異なることも多々あります。それにもかかわらず、SFA導入のお打ち合わせの場では、往々にして各自が考えている「顧客」の違いを意識せずに、全員が同じ認識のもとに議論が進んでいきます。

このような状態で環境を構築し、いざ実データを使って試験運用を始めてみると、各自の認識の違いが顕在化し、導入スケジュールが遅れたり、または、当初の導入目的を果たすことを諦めてしまったりといったことがよく見受けられます。

導入スケジュールが遅れてしまうのはまだ良いのですが、当初の導入目的を見失い、SFAが何のために使っているかわからない情報を入力するためだけの箱と化してしまうことは非常に残念だと感じてしまいます。 それだけ、「どの顧客情報を顧客マスタとして管理するか?」と組織で定義づけすることはSFAを成功させる上で基礎工事とも言える重要な検討事項であると考えられます。

範囲を定義してから具体的な要件に落としていく

もしあなたがSFAの導入を検討している際、あなたの会社のSFA導入を担当するコンサルタントがどんな前提も無しに「一括取り込み機能があるので今お客様が使っている顧客マスタのExcelがありましたら簡単に顧客マスタを作ることができます」といったことをおっしゃる方でしたら、残念ながらそのコンサルタントの方の能力はあまり高いとは言えないでしょう。

それはお客様のためにその情報をどう価値のあるものにして扱うか?ということを自身の経験を基に共に考えていくことがコンサルタントの役割であるにもかかわらず、SFAという箱を準備することが自分の役割と思っている可能性が高いからです。

少なくとも私は、まずは、この『取り扱う顧客データの範囲』についてしっかり共通認識を持ってもらった上で後続の検討を進めています。それぐらい重要なものだと考えているからです。逆にいえば、SFA導入準備の初期段階でこの定義を共通化できていれば、案件管理や商談報告書の設計などその後の導入プロセスがより深く有意義なものになります。

顧客範囲の定義が顧客マスタを設計する第一歩

 もしかしたら人によっては販売ターゲット対象外の会社でも顧客を紹介してくれるかもしれないということで、顧客とみなすかもしれません。またカスタマーサービスなどを担当されている方は、取引中の会社のみを顧客として扱いますし、R&Dを担当されている方は、まだ見ぬ集合体を顧客として扱うことがあります。上述のように個人ごとに顧客と捉える範囲が異なります。

顧客範囲の定義において、自社にとっての顧客を明確に理解することは非常に重要です。特に「自社と顧客との関係性」がその一環として注目されるべきポイントであり、それぞれの営業組織や担当者が異なる視点から顧客を定義していることがあります。

以下に、自社との関係性からの顧客の定義の例を挙げてみます。

  1. 取引中の会社
    • 既に商品やサービスの取引が行われている企業。これは最も直接的な顧客として捉えられる場合があります。
  2. 提案中の会社
    • まだ取引が成立していないが、提案段階に進んでいる企業。潜在的な顧客であり、将来のビジネスチャンスがある可能性があります。
  3. 過去取引があった会社
    • 以前に取引が成立したことがある企業。再取引の可能性があります。
  4. 過去提案したことがある会社
    • 過去に提案が行われたが取引には至っていない企業。関心を持っているが具体的な契約が結ばれていない状態です。
  5. 名刺交換があった会社
    • とりあえずの接触があった企業。まだ具体的なビジネスの進展がないが、将来的な関係性の可能性があるかもしれません。
  6. 未接触の会社
    • まだ何らかの接触がない企業。これは新規開拓の対象であり、まだ潜在的な顧客として扱われている段階です。
  7. 販売ターゲット対象外の会社
    • 販売対象とはならない企業。販売ターゲット外の企業でも協力関係や情報提供などの形で顧客とみなされることがあるかもしれません。

異なる職種や業務領域に従事する人々が、それぞれの立場や目的に基づいて顧客を異なるように定義することは自然であり、顧客マスタの効果的な管理においては、これらの異なる観点を考慮することが必要です。

管理対象を絞ってスタート

顧客と定める対象範囲が絞りこめていなければ、いくら苦労してSFAを導入して、たくさんの顧客データを集めた所でデータがゴミと化すのが必然となります。そのためにもSFA導入の際には、前述の「自社と顧客の関係性」においてどの状態に該当する企業をSFA上の顧客マスタで扱うのか?という点を明示することをお勧めします。

SFAの運用が定着化し、全てのデータをSFA上で扱うようになると、結果的に前述の企業全てが顧客マスタ上の管理対象となり、それをプルダウン項目等で分類して管理することになることが多いです。だからといって、最初から全ての顧客を管理対象にするのはお勧めしません。なぜならば、SFAはスモールスタートで始めることが成功への唯一の方法であるとされています。導入検討時にSFAで実現したいことと、実際にシステム上で実行することとを整理しなければならず、私もそう信じております。

最後に方法論を検討

例えば、初期段階においては取引中の顧客=既存顧客との取引のみを管理すると決定した場合には、既存顧客のリストを用意する必要があると判断できます。方針さえ決まれば、方法論はすぐに決められます。取引中の顧客情報であれば販売管理システムから基本情報を一括導入するなどが、方法論は誰にでも簡単に考えることができます。

先ほど例に挙げた「一括取り込み機能があるので顧客マスタはすぐに作ることができます」といった機能面については、全ての方針が決まった上で考えれば良いことであり、最も大切なことはSFA導入を通じて、どのような営業管理を実現したいのかを明確にすることです。その中で顧客を定義し、その定義に基づいた顧客マスタを定義することが非常に重要かつ難しい課題となります。

この顧客との関係性を定義しただけでは、まだ顧客マスタを完全に定義したわけではないのですが、まず初めに考えることとして重要なことだと思います。SFAを検討している方はもちろん、SFAを現在ご利用されている方も改めて、自社の顧客マスタについて再考されてはいかがでしょうか?

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