顧客名の品質を保つ運用テクニック
SFAの利用者であれば、顧客マスタ上に「同じ法人が重複登録されている」という現象が、日常茶飯事のように起こっているのではないでしょうか?
そのような現象に遭遇した場合、ただどちらかを削除するだけなら良いのですが、法人の情報が過去の案件や接触履歴などに紐づいていると、それも含めて付け替えが必要となるので、その作業をする方にとって非常にストレスとなります。
利用者の立場からすると法人名の重複を0にすることが理想ではあります。しかしながら、結論から言うと、筆者は法人の重複登録を0にすることが非常に難しいと考えています。
なぜならば、人がデータを入力するからには必ずミスが発生するためです。
もちろん理論上は、国税庁法人番号公表サイト(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)より公開された法人番号を一意の識別値として扱い、運用の中で工夫ができたり、RPAなどで大部分を自動化ができたりもします。しかし、重複登録が0になることはないでしょう。
もし、将来的に「紙での名刺が廃止され、全て何かしらの電子化した手段で名刺交換をする」という状況になったら、重複登録0を実現できるかもしれません。しかしながら、昨今では、オンライン面談などが増え電子名刺交換が盛んになってきたとはいえ、現時点ではそのような状況にはなっておりません。
一方で、このような話をすると手段が目的化してしまいます。あくまでもSFAは、データを綺麗に管理することが目的ではなく、データを活用して顧客の開拓・深堀活動に役立てることが目的であるという視点に立ち、法人の重複登録防止に関してもある程度割り切って、運用しながら最適解を見つけていくことが重要だと思います。
今回は、法人を登録する際の法人名の管理について、システムを使うからこそ実現できる、重複登録を回避するテクニックに関してご紹介したいと思います。
法人名とは別に法人種類を管理する
法人名と一緒に法人種類を入力させる(例:「〇〇株式会社」と法人種類まで入力させることを指す)ことが重複データを生み出す大きな原因の一つです。そのため、法人名の入力欄には法人種類を記入させず、法人種類の入力は別の選択肢を設けて行いましょう。
Wikipediaにて調べると、日本には法人の種類が非常に多いことがわかります。
参考URL:日本の法人の種類の一覧
先程も述べたように、顧客開拓につなげるという目的を忘れず、ある程度割り切ることが重要なので、Wikipediaに掲載された全ての選択肢を用意する必要は無く、自社のターゲットがどこなのかということを意識しながら選択肢を設定するのが良いでしょう。
例としては、下記のようなものが上げられるでしょう
- 株式会社
- 合同会社
- 有限会社 ※新規設立は廃止されたとはいえ、既存は残るため
- 独立行政法人
- 特定非営利活動法人
- 一般社団法人
- 社会福祉法人
- 信用金庫
- 商工会
- その他
もし、病院などの医療業界をターゲットにしている場合は、医療法人を選択肢に加え、それ以外は“その他”として扱うと良いでしょう。この場合の選択肢内における「その他」は、自社のターゲット外と言った意味合いで扱うことで、より顧客開拓につなげるという目的を意識した顧客マスタ管理につながるでしょう。また法人種類の選択肢は、多くても10個くらいにすることが望ましいです。
また日本では“〇〇株式会社”も、“株式会社□□”も存在するように、法人種類の位置が会社によって違います。そこで、法人種類の位置が前か後かの選択肢を用意しても良いかもしれません。
文字の強制変換
次に重複を生みやすいのは、全角半角文字や前後空白です。前後空白は、ウェブサイトなどから法人名をコピー・ペーストした際によく発生します。そのため、ここを機械的に変換する仕組みを入れることで重複防止につながります。
法人名を入力する際に使用する下記に対して、A~Dのような強制変換を行うと良いでしょう。
- カタカナは全角変換
- アルファベット・アラビア数字は半角変換
- 記号文字は半角変換
- 前後の半角スペースを削除(③により全角スペースは既に半角スペースに変換されています)
文字チェック処理
次のような文字チェック処理を入れると良いでしょう。
- 法人名の入力欄に法人種類が入っている場合はエラー
- 株式会社の略号を表す文字[(株),㈱,㊑,㍿]が入ってる場合はエラー
このような仕様を顧客マスタ登録画面に組み込むだけで、利用者にあまり負担をかけずに高い確率で重複防止をすることが出来ます。
重複防止運用は試行錯誤しながら最適解を探す
今回は、重複防止テクニックをご紹介しましたが、重要なことはSFAを使用する目的を忘れず、利用者の負担をかけずに重複原因を防ぐ方法を運用しながら見つけていくことです。最初から完璧を求めるのではなく、運用しながら最適解を探すと良いでしょう。
一方で、上述のような処理を組み込めない、もしくは製品そのものに手を入れないと組み込めないようなSFAに関しては、個人的にはあまりお勧めしません。
そのような仕組みのSFAは、法人名の件に限らず柔軟性に欠けるため、運用をするにつれ課題が明確になればなるほど、「やりたいこと」と「システムで出来る事」のギャップが起きてしまい、結局、営業人ないしは営業組織を強くする事につながらないからです。
本日お届けした内容が、SFA未導入の方、SFAの運用に行き詰っている方のご参考になればと思います。