マスタ品質を維持するためには、マスタ管理責任者が必要不可欠
「信頼できる情報の3要素』というタイトルの記事で、SFAを経営判断のためのダッシュボード※とするために必要な品質の構成要素を「鮮度」「精度」「粒度」に分解して、それぞれの概要をご紹介しました。今回はマスタデータに関する「精度」「鮮度」に関するテーマを記載いたします。
※ダッシュボードとは、自動車などの「計器盤」を意味する英単語。ITの分野では、複数の情報源からデータを集め、概要をまとめて一覧表示する機能や画面、ソフトウェアなどを指すことが多い。
マスタデータであってマスタデータにあらず
サブタイトルを見て「何のことだろう?」と思われるかもしれませんが、私がSFA運用支援をしている中で、ほとんどのお客様が「会社データはマスタ化されている」とおっしゃるのですが、多くの場合、実際のデータを拝見すると
- 重複
- 欠落(管理したい項目が未入力)
- 間違い
が散見されます。
そのため、例えば地域を”神奈川”に絞った上位顧客20社を出した場合でも、東京の会社があったり、地域情報が未入力のため出てこない会社があったりします。本来SFAにおいてのマスタデータの最重要役割は、営業活動の次の一手を考える際の分析に使われるべきですが、大抵は、案件や商談報告を入力する際の社名入力簡素化のためだけに使われているのが現実です。簡素化だけに使うなら、最近では過去の案件から1,2文字入れて候補を出す(インクリメントサーチと言います)ことなどが比較的簡単に実装できるので、それを使った方がよほど効率的になります。
第一歩はマスタ管理者をアサインすること
当然、マスタデータを100%の状態で精度も鮮度も保つことは難しいのですが、上述のように営業活動の次の一手を考えるためには、少しでもデータ信頼性を上げる努力をする必要があります。データ信頼性を上げることは短期的に考えると無駄に思えますが、長期的に考えると、他社への差別化につながります。特に製品・サービスで差別化が出来ないような場合は、なおさら重要になってくると考えられます。つまり、営業の仕組みそのものが他社への差別化になるのです。
そのための第一歩は、とにかく細かいこと(HOW)は脇に置いて、マスタ管理者をアサインすることです。つまり、マスタデータ品質維持を一つの仕事として考えることです。
最近では、インサイドセールスという表現で、内勤営業組織を作る企業が増えてきています。まさにその部隊が適しているかもしれません。ただし、一点注意しなければならないのは、マスタ管理者を営業アシスタントにお願いすることはお勧めしません。
なぜならば、営業の全体像、方向性などを把握できていない方が管理者をやっても、マスタデータを営業戦略資産として育てることが出来ないためです。あくまでもマスタ管理者は、営業ないしはマーケティング視点で考えられる方が責任者となり、実際の作業については、その責任者のアシスタントが行うという役割分担が望ましいです。
ではどのようにマスタを管理するのか?
前述では、方法は置いておいてまずはアサインするということを記載しました。というのは、方法論に関しては、売っている製品・サービス、規模、リテラシー、既存システムなど組織の状況によってケースバイケースであることから、具体的な方法論をお伝えすることが難しいためです。この方法論に関しては、機会を見てご紹介できればと思います。
後は何よりも実データを使って、先ほどの地域別社名リストなど、いくつかそのデータを使った分析シミュレーションをやってみて、マスタデータの”ぐちゃぐちゃ度合い”を実感してみてください。結果をみれば必然的に現状を元に次に改善すべきことが見えてくると思います。そして、失敗を繰り返しながら改善することが最終的に一番の近道だと考えています。